検索マーケティングの世界最高峰カンファレンス「SMX(Search Marketing Expo)」。今年も米国で開催されたこの熱狂の場に、COOD株式会社が参加し、現地の最新トレンドレポートを公開しました。ChatGPTの台頭やGoogleのAI Overview(旧SGE)の普及により、我々が知る「検索エンジン」のあり方は根本から変わろうとしています。海外のトップマーケターたちは今、何を考え、どこへ向かっているのでしょうか。本記事では、COOD株式会社が持ち帰った最先端のインサイトと、企業が生き残るための事業戦略を余すところなくお届けします。
1. 脱「SEO」? AIからの可視性を最大化する新戦略
今回のSMXカンファレンスで最も象徴的だったのは、「いわゆる従来型のSEO(内部対策やテクニカルSEO)の話がほとんどなかった」という点です。海外のマーケターたちの焦点は、キーワードを狙って検索順位を上げることではなく、「AIからの可視性(AIビジビリティ)をどう最大化するか」へと完全にシフトしていました。いわゆるGEO(Generative Engine Optimization)やLLMO(Large Language Model Optimization)と呼ばれる領域です。
部署名の変更: 一部の先進的な企業では、すでに「SEO部門」という名称を撤廃しています。SNS、デジタルPR、AI検索までを包括して管轄する「オーガニックメディア部門」へと組織を再編し、職種名も「SEOコンサルタント」から「AIビジビリティ・スペシャリスト」などに変化しています。
予算の大規模なシフト: カンファレンス内で示された調査によると、海外マーケターの約59%が、今後のリソースを「SNSやブランドプレゼンスの向上」「権威性を高めるためのデジタルPR」に割り当てると回答しています。AI検索で自社を引用・推薦してもらうためには、自社サイトの改善だけでなく、Redditなどのコミュニティ、YouTube、外部メディアでの言及をコントロールする「面」での対策(デジタルPRやコミュニティマネジメント)が不可欠になっています。
2. 成果が見えにくいAI検索への向き合い方
日本でも大きな課題となっている「AI検索からの流入や成果が計測できない」という問題。これに対し、海外のトッププレイヤーたちは「多少の不確かさを受け入れる覚悟」をすでに持っています。
「AIは単なる検索(アンサー)エンジンではなく、ユーザーの意思決定(ディシジョンメイキング)をサポートするエンジンである」。ユーザーがAIとの対話を通じてブランドを知り、「これ、いいな」と思ってから後日Googleで指名検索をして商品を購入した場合、AI検索の直接的な貢献をGA4などのデータで完璧にトラッキングすることは不可能です。
COOD株式会社は、この状況を「ラジオ広告や巨大な屋外広告(OOH)を出していた時代に巻き戻っているようなもの」と表現しています。AI検索最適化を、クリック単位で効果測定を行う「パフォーマンスマーケティング」としてではなく、ブランドの純粋想起を獲得する「ブランドマーケティング」として捉え直す時期に来ているのです。
3. SMXで注目を集めた3つの重要セッション
カンファレンスの中で、COOD株式会社が特に「学びが深かった」と評価する3つのセッションのハイライトをご紹介します。
① トピカルオーソリティの構築が鍵(Aleyda Solis氏)
例えば「2026年のおすすめランニングシューズ」という単一の記事を作り、上位表示を狙う従来のSEOは通用しなくなります。AIとの対話では、「マラソン用なのか」「トレイル用なのか」「日常使いなのか」といったロングテールなニーズが次々と分岐していきます。価格帯、重量、用途などの細かいマトリックスを網羅した「トピッククラスター」を構築し、その分野における圧倒的な専門性(トピカルオーソリティ)を示すことが、AIから推薦されるための必須条件となります。
② 検索結果の「沈み込み」とインプレッションSEO(Moz)
検索結果画面(SERP)の上部にAI Overviewやリスティング広告が表示されるようになった結果、スマートフォンでは自然検索で1位を獲得しても、スクロールしなければユーザーの目に入らない(ファーストビューに入らない)状態が常態化しています。そのため、クリックや順位だけを追うのではなく、「ピクセル単位でいかに画面上部に露出し、インプレッション(視認)を獲得するか」を意識するインプレッションSEOの考え方が重要視されています。
③ エージェンティック・コマース時代への備え(Shopify)
ユーザーに代わってAIエージェントが商品を比較・購買する「エージェンティック・コマース」時代を見据えた対策です。AIが商品を正しく理解し、自信を持って推薦できるようにするためには、ECサイトの商品詳細ページ(PDP)を極限まで磨き上げる必要があります。スペック、特徴、購入前の不安を払拭するFAQ、レビュー、そして何よりAIが機械的に読み取れる「構造化データ」の実装が生命線となります。
4. 経営・事業戦略としての「AI検索シフト」
これらの最前線の情報から見えてくるのは、AI検索対策はもはや「Web担当者だけの仕事」ではないという事実です。事業を牽引し、市場の波を乗りこなすためには、より俯瞰的な戦略が求められます。
| 戦略の柱 | 従来のアプローチ (SEO) | 今後のアプローチ (GEO/LLMO) |
|---|---|---|
| 組織体制 | 検索、SNS、PRが分断(サイロ化) | 「オーガニックメディア」として統合・連携 |
| KPIの設定 | セッション数、直接CV、検索順位 | インプレッション露出度、指名検索数、全体売上の相関 |
| コンテンツ | キーワードベースの集客記事 | AIが読み取れる構造化データとトピカルオーソリティの構築 |
特に、プロファウンド(Profound)のようなAI検索可視化ツールがユニコーン企業となり、ウォルマートなどの大企業がインフラとして導入している米国の現状を見ると、「AI検索対策をやるべきか否か」という検証フェーズはすでに終了しています。
見えない成果(不確実性)を組織として許容する文化を醸成し、インターネット上に「自社にとって有利な情報(UGCや第三者言及)」を面的に展開していくこと。これが、AI時代における最強のマーケティング戦略と言えるでしょう。